漱石は「I Love you」をどのように翻訳したか

「I Love you」

 

尾崎豊の歌にもありますが、「LOVE」という言葉が日常的に多く、多様に、平易に、ある時はなれなれしく使われていますね。

 

特に歌の世界では、これ以外の表現がないかのように、頻繁に、ハードに、<私=I>を押し付けるように使われています。が、意味するものは、随分異なるようですね。

 

では、100年前の夏目漱石は、この言葉を何と翻訳していたのでしょうか。

 

夏目漱石は「I Love you」を「月がとても綺麗ですね」と翻訳したというエピソードがあります。

知っている人はどれくらいいるでしょうか。

 

「LOVEと月がどこで繋がるの?・・・」と思った人はいませんか?

 

LOVEと月は、全く異なる概念ですが、この飛躍したように見える翻訳を、素直に理解できた人は、日本人の情緒がわかっている人ですね。

 

では、次の場面を想定して、あなたの翻訳をつけてください。

・・・恋人が戦場に発とうとしています。もう2度とあえないかもしれません。

 

そのシーンで婚約者の女性が「I LOVE YOU」といいました。

この場面で、あなたは、なんと翻訳しますか?

 

日本語をつけてください。

 

 

 

さて、・・・できましたか。

 

私の友人は「死なないでね!」と翻訳しました。

LOVEの深さを伝える言葉です。・・・涙が出てきますね。

 

ダメだと思っても、小さな希望を託して「生きて帰ってね」

この言葉に切なさが滲みでますね。

日本語は奥が深いのです。

英語なら、長たらしくなる言葉を、日本語は「一言」でこんなに表現できるのです。

吠える必要はありません。

 

翻訳のレベルを超えた文化

二葉亭四迷という文学者は「愛している」という言葉の代わりに「死んでもいい」と翻訳したことで有名ですね。

 

彼は、ロシアの作家ツルゲーネフの「片恋(アーシャ)」という短編を和訳するにあたり、当時の状況に合わせて、このように翻訳したのです。

 

彼が活躍した時代は「LOVE」を「好き」と、直接的な表現する文化がなかったのです。

 

さすが、日本を代表する一流の文学者です。

気持ちを表現する言葉の選択として最適だと、私は思います。

 

夏目漱石が旧制中学(現在の愛媛県立松山東高)の教壇に立って、英語を教えていた時の話です。

 

生徒が「I LOVE YOU」を「われ君を愛す」と訳したのを聞いて「<月がきれいですね>とでも訳しておきなさい」と指導したというエピソードが、これですね。

 

これが<LOVE>=<月がきれい>になるのですが、この逸話は、漱石の文章の中にはありません。

しかし、さすがイギリスに留学した経験がある文豪らしい翻訳だと思います。

 

恋人たちが「I LOVE YOU」と直接言わないで気持ちを込めて「月がきれいですね」という。

 

これだけで、「充分に意思が伝わる」のですね。

 

こんなロマンティックな気分で、愛情を月に代えて語る文化が「日本の伝統」にあったのです。

このような表現は、吠えるように「I LOVE YOU」を繰り返す歌の中にはありませんね。

 

私が言っている意味が理解できない人がいるかもしれません。

ここまで来ると、翻訳のレベルを超えて「文化の問題」です。

 

あなたにとっての「LOVE」とは?

 〈Love〉は英語であり、古代ギリシャ語には、これに該当する言葉はありません。

 

エロース(Ἔρως,性愛)、フィリア(φιλια,隣人愛)を当てはめてもスッキリしないし、キリスト教で使われるアガペー(αγάπη,真の愛)でもない。

もうひとつのストルゲー(στοργή家族愛)でもないですね。

 

どれも当てはまりませんね。

 

NHKの大河ドラマ「天地人」の中で、直江兼続の兜に「愛」という文字がありましたが、これはLOVEとは、全く関係ない「愛宕神社」から取ってきたものです。

 

表面的な「文字ずら」だけで、関連性を求めることは危険です。

自分で調べてみてください。

 

LOVEという語句は、愛情・善意・好意・恋愛・恋・性欲・愛着・慈愛・慈悲・敬愛・愛好・・・と様々な捉え方があります。

 

言葉の意味だけを考えても楽しいし。

LOVEの対象を「個人・人類・世界・自然・・・」と広げてみるのも楽しいですね。

 

自分のLOVEは何なのか???

 

ちなみに、キリスト教では「I」は<私>ではなく、「聖なる神」を指す言葉です。

 

キリスト教系の大学に進学志望する人は知っていた方がいいでしょう。

 

「I  LOVE  YOU 」の「I」に神様を置いてみてください。

全く異なる意味になりますね。

 

あなたの訳をつけてください。

 

むかし、私が指導した青山学院の推薦入試「小論文」に次のような問題が出題されたことがあります。

皆さんも、600字で感想を書いて、LEADESTの先生の指導を受けてください。

 

マザーテレサの座右の銘だったそうです。

I have called you  by  name.  you are mine.   (イザヤ書 43:1)

 

 

近日中に、LEADESTは「英語コース」を開始すると聞いています。

 

指導者は海外生活が豊富なベテラン講師。

小さな子供たちから始めると聞いていますが、私は中・高生コースが必要だと思います。

 

やがてLEADEST主催の翻訳コンクールを開催できるようにして欲しいですね。

 

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コメント: 1
  • #1

    おぽぽぽp (月曜日, 30 10月 2023 21:24)

    いjふぉけjfじぇひ