はじめに
安倍首相が、「2020年に憲法を改正する」と発言していますね。
これは政治問題であって「高校生や中学生の入試に関係がない」と思っていませんか?
これは重要な入試の「隠れテーマ」になりますから、文系の大学に進学する志望者だけでなく、理系の人も、高校入試でもしっかり学習しましょう。
憲法は、「すべての法律の根本に存在するもの」ですから、憲法の改正は、国民生活の根底を揺れ動かすことになることをしっかり意識してください。
だから、大学入試でも、いろいろな形で出題されます。
今年でなくても、来年は・・というテーマです。
まず大学入試センター試験では、日本史・世界史・政経・倫社・小論文・国語・英語などの教科で、「法律に関係する内容」として多角的に出題されるでしょう。
出題者の視点とは
では、大学入試の「作問」ではどうなるか。
考えてみましょう。
受験生の視点からの問題ではなく、出題者の視点からのテーマを掘り下げるのです。
例えば大学入試センター試験の「世界史」ならば「大問」の1つとして取り上げられるでしょう。
まず「テーマ文」で幅広い問題提起がありますね。
次に、設問として4つ。
ヨーロッパ・中国・アメリカ・日本と角度を変えて掘り下げる。
配点は25点で、小問はいくつかに分かれるでしょう。
もちろん、こんなに素直に出題されるということではありません。
が、みなさんが普段考えない「作問から入試問題を考える」には理解しやすいでしょう。
次に、各大学の「2次試験の問題」でもいろいろな論述問題が検討されます。
例えば、東大の世界史「問1」の論述では格好な素材です。
指定するキーワードの中に「処理しにくく」・「弁別しやすい歴史上の語句」・「キーワード」を1~2いれて置けば、採点がしやすく、受験生の実力の判定がしやすいからです。
このほか、北海道大学・九州大学など法学部を持っている大学で出題が検討されるでしょう。
全国の予備校は重点的に「予想問題を出します」ね。
もちろん、早大・慶大をはじめ、中央大の法学部など、私立大学では、歴史的な背景や現代的な課題として、多様な取り上げ方が工夫されるでしょう。
AO推薦入試でも積極的に取り上げられるでしょう。
だから、「過去問をチェック」することから始めましょう。
LEADESTでは、高3生用に対策特講を、土・日に計画するといっていますね。
他の塾予備校に通っている人にも窓口を開くはずです。
応募者がまとまったら集中講義がいいですね。
私も「講師として参加」するかな?
私は「教えるのが好き」だから。
プロですから、傾向と対策は得意ですからね。
漠然と勉強していては、このテーマの合格ラインに達しません。
法学部・文学部など教養学科への志望者だけでなく、関心がある人は集まるといいですね。英語で出題されることも想定して、LEADESTのベテラン講師の指導を受けてください。
9つのQuestion
では、9条に絡めて、「9つのquestion」を出しますから、下記の文章を参考にして自分で「記述式」の解答を作ってください。
得点につながる記述は訓練が必要です。
1 古代ローマの「市民法」と「万民法」はどのように違いますか(60字)
2 イギリスに、日本のような憲法がありません。なぜですか(40字)
3 ローマ法大全をまとめさせた東ローマ皇帝とその主編集者は誰ですか(20字)
4 イギリスの「権利の章典」は誰が誰に、何のために作らせたものですか(50字)
5 ワイマール憲法が日本国憲法と近いといわれる理由はどこにありますか(80字)
6 「朕は国家なり」といって自分が全ての基準であるといった人は誰ですか(5字)
7 中国の律令制度を日本で採用したのは、日本の何時代ですか。(4字)
8 欽定憲法とはどんな意味ですか。なぜ、大日本国憲法は欽定憲法ですか(30字)
9 日本国憲法原案は英文でした。前文を翻訳した『路傍の石』の作者名は。(4字)
人間は権力を持つと、「自分の好き勝手にやってしまいたくなる」ものです。
だから、「国王」の権力支配を制限するために、イギリスの「貴族」たちは闘い、勝ち取った権利を記したもの「マグナカルタ」であり、名誉革命で、王の権力を制限したのが「権利の章典」ですね。これがイギリスの不文憲法の根っこになっています。
イギリスには、こうして積み重ねた「凡例」がありますが、国王が臣下に与える欽定憲法のようなものはありません。「法の支配」というルールは、議会を通じて厳格に守り抜く強い精神があっ、初めて法治国家が発展したのです。
これから、弁護士、国際弁護士になろうとしている人は知っていてください。
フランスのルイ14世は「私が決めたことが全てある」と言いきりましたが、本来、権力を持ったものは、こうした「傲慢さ」を持っていると考えてよいでしょう。
フランス革命はこうした「特権」持つ階級に対する「市民」たちの抵抗運動でしたが、1791年憲法を始め、93年憲法・95年憲法と「時の権力を握った人たち」の意志で憲法を何度も何度も改訂したので、国政が落ち着きませんでしたね。
市民革命の「自由」「平等」「博愛」の精神を維持・発展するためには、多大な努力と犠牲が強いられました。
ドイツのワイマール憲法は日本国憲法に一番近いものです。
が、この理想的な平和憲法は、ヒトラーの台頭を抑えることができず、第1次世界大戦後のドイツの大不況を乗り越える力も持っていませんでした。「理想」と「現実」の間にあって、国民の意識が揺らぎ、ファシズムが支配する国家になってしまいましたね。
そして第2次世界大戦に突入しました。
EUの理想・理念は、多くの犠牲を払ったのちに生まれたものでした。
古代ギリシャ・古代ローマの歴史は、人々の生活と法律が、いかに密接に関係しているかを教えてくれます。小さなポリス・ローマが周囲の敵と闘い、団結するために作られた「市民法」が、やがて共和制ローマの市民の権利・義務に発展します。
が、イタリア半島を統一し、やがてローマ帝国として、異民族をたくさん抱えるようになると市民法では賄いきれなくなります。そこで、多くの民族に共通する「万民法」が必要になります。いまで言えば「国際法」のようなものですね。
中国の「国のかたち」をつくったのは、秦の始皇帝ですね。彼は、李斯を中心とした「法家」を尊重して国家統一を実現しました。「律」とは従わないものは厳罰に処する刑法で、「令」は行政法・民法を指しました。次の漢の時代になって、法が一層整備され、いわゆる「律令制度」が成立しましたね。
律令制度は、日本の奈良時代に導入されましたが、日本の風土に合わないので、平安時代になると「令外の官」として、太政大臣などが誕生しますね。
国民性に合わない制度は定着しないですね。
東大の日本史のテストには、例年いろいろな形で「律令制」が出題されていますから、受験生は、こうした傾向を知って対策を講じなければ合格できません。
中国の国家支配は、伝統的に「貴族」が「庶民」を治めるのが基本です。
西欧式の「基本的な人権」という思想はありません。周代から「貴」と「庶」は厳しく区別されていましたから、貴に属するものは、為政者として、いかにあるべきかを考えるのが慣わしでした。孔子の「論語」はその典型ですね。
「中華思想」もこの流れの中にあるはずです。
勝手に他人のものを奪うことも、気に入らない人を殺すことも、強奪することも、食べ物を独占することも、権力を持った者の自由でいいという考え方は「権力の中身」ですから、「法によるコントロール」の思想は、ヨーロッパだけでなく、どの国家にあっても尊重されるべきものです。この「法治主義」の根本は「憲法」にあるのですから、私たちは歴史的伝統と法に対する知識をしっかり理解し、力に昇華しなくてはいけないです。
現行の日本国憲法は 前文で国民主権、基本的人権の尊重などを明記していますね。
これはGHQの指導の下で書かれたものですから、原文は英語で、欧米の「社会契約思想」で貫かれています。
翻訳したのは、作家で貴族院議員だった山本有三氏です。
これは「功利主義」と繋がっているので、私たちの日々の行動基準や考え方は、この2つに大きく影響されています。
これは、天皇を中心とする「日本の国体」に反するという意見が強くあります。
だから「道徳教育」が必要だとか、最近は「教育勅語」まで取り上げられているのです。
さいごに
憲法改正について、入試では直接政治にかかわる形の出題は避けられると思います。が、こうした法に関わる歴史・背景を、しっかり押さえた勉強が必要です。
それにもまして、「これからの日本」の国のあり方を決める大問題ですから、「無知は罪悪である」ということにならないように注意しましょう。
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