生きた情報・デルフィのアポロン神殿

進路選択の上で重要なものは「情報」である。

 

多くの高校生が最初に体験する選択は「文・理選択」である。

 

次は「受験教科」と「志望校」

 

最後は「出願校」である。

 

「自分は、文系に適しているのか」

「理系があっているのか」

ということだけでなく、受験に直結する「教科」、「出願校」の選択は「情報の質と量」で決まる。

 

そこで、今回は「生きた情報」について、思考を広げて古代ギリシャの例から考えてみよう。

 

アポロン神殿と情報ネットワーク

古代ギリシャのデルフィは、単なるポリス(都市国家)ではなかった。

 

切り立った急斜面を都市遺跡にそって登っていくと、アポロン神殿に出る。

 

この神殿の入り口に「汝自身を知れ」という格言が掲げられていたというが、これがギリシャ哲学の出発点である。

しかし、私が行った時はすでになくなっていた。

当然だが残念だった。

 

アポロン神殿の巫女が下す「神託」は、神様のお告げという意味であるが、その内容は多岐にわたる「情報」だった。

依頼者によって異なるからである。

 

例えば、ポリスの政治家からは、他国との戦争の開始・終結という政治問題。

個人的な恋愛相談まで神託を仰いだようである。

現在の女性が好きな「占い相談」のようだったかもしれない。

 

このように神託は広範囲のものだったようである。

情報の根拠は、ギリシャだけでなく、地中海全般に広がるアポロン信仰・その拠点としてのアポロン神殿が持つ大きな「組織とネットワーク」の力だった。

 

現代風にアレンジすれば、情報を蓄積し、その集積されたデータから割り出した選択である。

「この大学の競争率は何倍だ」

「偏差値は!」という情報を得て、出願先を決定するようなものである。

 

現代では、教育産業が持つデータ・情報力の影響と言い換えることができる。

 

LEADESTの情報センターは私である。

私の背景にベネッセ・河合塾・駿台・代ゼミ・全国の学校の先生方からなる巨大な情報ネットがある。

 

情報は「武器」である

アポロン神殿は、古代ギリシャの中にあって突出したネットワークを持つことにより、顧客の要求に対応していたのだ。

 

デルフィに、超一流の情報がスピードよく集まり、政治・経済の動向にも、スピード良く情報を提供するシステムが構築されていた。

 

巫女が「神託」という形で発信していた情報は明らかに「武器」であった。

 

アポロンの神託は、後世まで、社会と個人に大きな影響を与えた。

 

「ソクラテス以上の知恵のある者はいない」という神託を起点にして、ソクラテスはアテネの政治改革に立ち上がった。

彼を出発点として、プラトンやアリストテレスの哲学が生まれた。

 

ソクラテスの対話法は現代風に言えば「アクティブラーニング」のことである。

「無知の知」・「産婆術」、プラトンの「イデア論」、アリストテレスの「エイドス論」は、同じ根っこを持っている。

 

また、有名な「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?」

というなぞ・なぞがあるが、これもアポロンの神託に起因している。

 

この話はソフォクレスという作家が書いたギリシャ悲劇の中に出てくる。

「オイデプス王」という有名な作品の中で、スフィンクスがかけた「謎がけ」である。

答えは知っていますね!

 

オイデプス王の悲劇の発端は、アポロンの神託で「この子はやがて父親を殺し、母を妻とするだろう」であった。残酷な神託である。

 

私は、オイデプス王が父親を殺したという峠の三叉路に立ってみたが、その時は、貴族(父・テーバイ王)の馬車が来なかった。

 

当たり前であるが、峠に立ってみて感慨にふけった。

 

心理学に興味を持つ人は、これが「オイデプス・コンプレックス」とよばれる心理現象の出発点であることを知っているだろう。

 

男の子は、母親を慕い、父親を拒絶する心理を指している。

 

この逆の女の子の心理を「エレクトラ・コンプレックス」というが、これもギリシャ悲劇からくる。

 

親・子関係を考えるヒントになる。

情報を受け取る側にとって必要なこととは

ギリシャ神話に出てくるアポロンは、竪琴の名手であり、学芸の神様でもある。

 

なかなかのハンサムで、女性にもてたというが、エロス(英:キューピッド)を馬鹿にしたので、彼には相手に恋する「金の矢」を、ダプネーには相手を拒絶する「鉛の矢」を放ったので、徹底的に嫌われた。

 

好きな人には嫌われ、嫌いな人に好かれる・・・。

 

イケメンが常に恋の勝利者ではない。(笑)

 

スポーツ大会の優勝者に送られる「月桂冠」は、この話からきていることも知っておくと楽しい。

 

ギリシャ神話は面白い。

 

私が、デルフィを旅した時、薄暗くなった夕暮れ時に、突如、もの凄いカミナリの洗礼を受けた。

ピカピカと強烈な雷光が走った。

私と同行していたお天気博士の草分け・根本順一先生が「これがアポロンの神託だ」と笑った。

切りだった山の斜面は、海風を受けて雷が発生しやすいところでもあった。

神託は、突如起こる天候異変と深くかかわっていると先生が解説してくれた。

 

 

生きた情報は神託と同じ重さを持つ。

如何なる方向を選択するべきかを示唆する「指標」になるからである。

ただし、情報も神託も、受け取る人によって、その価値が変わってくる。

情報を有効に利用して、自分の進路選択を幅広く展開していこう!!