私たちはいろんな基準をもって生きている。
あの人は、背が「高い・低い」
味付けは「甘い・辛い」
買い物の基準は「高い・安い」
いや品質が「良い・悪い」
では、行動の基準で、一番大きなものは「好き・嫌い」じゃないかと思う。
誰かに好かれようと思っても、単純に好かれるものではない。
好かれることは難しいが、嫌われることは簡単である。
「誰かに好かれる」ということには、それなりに理由があるはずである。
それは何か?
(1) 相手の本音に寄り添うこと
人間は他人のことには関心を持たない。
ひたすら、自分自身に関係することのみに関心を持つ。
だから、相手が関心を持っていることに寄り添って、むき合うことが「好かれる原則の①」である。
「きれいになりたい」と思っている人に、政治・経済について話をしても通じない。
ダイエットに関心を持っている人に、美味しい食事の話をしたら嫌がられる。
人間は、自分自身に係ること、関心を持っている話題には飛びつくが、そのほかのことには反応しない。
最大の関心事は「自分自身」である。
自分に関心があることに反応し、行動する。
これは恥ずかしいことでも、遠慮することでもない。
いつも自分に関心を持っていることが「自分の存在理由」だから。
昔から杉本さん(仮名)は、いつも不平・不満を私にぶっつけてくる。
私は「あなたは正しい。だから間違っている」という。
自分の要求に、すぐに応えてくれないという不満だからだ。
自分は正しいといっても、相手のためにならなければ、ついてこない。
いつも「私」の基準が正しくても、「相手」は反応しない。行動しない。
杉本さんの視線はいつも自分自身に向いている。
自分のことに関心が強くて、他人のことにはほとんど関心を持たない。
人間は自己中心の動物である。
が、これを露骨に示すからうまくいかない。
有能で、良い人でも人気がない。
人間は「自分を大切にしてくれる人を好む」。
この原則に沿って行動することである。
(2)笑顔であいづちを打つ。
誰もお説教をする人より、よく話しを聞いてくれる人が好きである。
知人の山川さんの人気は、他人の話をよく聞くからである。
聞いたからといってその通りにするわけではない。
先日の会議でも、タイミングを見てしっかり方向性を示していた。
だからまとまりが早い。
山川さんは、誰が、どんな関心事をもって会議に出席するか。
事前にしっかり調べている。
テーマに関心が薄い人には、積極的に「発言の機会」を与えて出番を持たせている。
そして、チームから離さない。
笑顔を絶やさない。
「相槌」は頷くだけで良い。
誠実に関心を寄せていることを表現するからである。
誰だって、純粋に関心を寄せてくれる人に好意を持つ。
ペット犬と同じである。
これが「好かれる原則の②」である。
齋藤先生は「名前を覚える」のが早い。
これも誠実な関心の寄せ方の1つである。
決して「あの子」とか「この生徒」とは言わない。
必ず固有名詞で呼ぶ。
これは齋藤先生だけではない。
企業の上司でも部下でも「名前を呼ぶ人」が好かれる。
他人行儀の壁を破るからである。
学校の教員はファーストネームをよく使う。
「大谷!」「ショウヘイ!」という具合である。
クンとかサンをつけるべきだという意見があるが、これでは感情が伝わらない。
人間関係の深さを指すファーストネームの呼び方は、外国ではよく使われている。
政治家は意図的に多用する。
名前で呼ばれた人は「自分の存在を認められた」と思うから、素直に反応する。
つまらない世辞を言われるより、はるかに心地よいからである。
敬語・丁寧語はあまり使わないチームが強い。
団結力が涵養されるからだ。
(3)ヨコの関係=「共感」を大切にする。
当たり前のようであるが、誰も「途中で口をはさまない人」が好きである。
また、自分に好意を寄せてくれる人と親しくなる。
どんなに正論を言われても共感しない人を避ける。
どんなに隠しても、非難や批判の気持ちは、簡単に先方に伝わる。
目や口もとで感情が現れるからである。
ボディランゲージは、相手を理解する重要な手段である。
「好かれる原則の③」は共感である。
教育・育成の基本は共感の姿勢・態度である。
企業の研修の重点は「上位下達」である。
だから「タテの伝達」・「記憶中心」のケースが多い。
早く仕事を理解し・即戦力になることを期待するからである。
しかし研修に時間をかけるわりに効果が上がらない。
理由は、「共感」を中心に置かないからである。
ほとんどの場合、一般社員は実践業務の中で必要なことを学習する。
最近は、研修の形を変更してきた企業が目立つ。
「よしやってみよう」という共感を引き出すための工夫である。
自由とは「ヨコの関係」の広がりを指すことが多い。
学校教育は「ヨコの関係」を大切にする。
しかしタテ軸が定まらないヨコ軸の研修は非効率である。
(4)議論をして勝とうとしない。
議論に勝っても、相手に好かれない。
だから嫌われる議論をしないことだ。
人間は感情の動物である。
論理を理解しても、人は動かない。
納得したふりをして最低限の役割しかやらない。
むしろ、穏やかに話すことに留意して、「説得」より「思いつかせる」ように誘導する方が賢い。
できるだけ「議論をしないで、良好な関係づくりに留意する」ことが「好かれる原則の④」である。
営業先で議論したら商品は売れない。
情報も入らない。
面談は議論の場ではない。
好きにならなければ、どんな仕事も進まない。
友人の藤原さんは「議論好き」で言い争いばかりしている。
議論に負けないことが自慢らしい。
しかし、どんなに議論に勝っても実績は出ない。
成績は上がらない。
みんなが協力しないからである。
むしろ反発され嫌われてしまう。
「挑発が相手を傷つけている」ことに気づいていないからである。
彼は、議論をして、相手の弱点を指摘し、説得することに重点を置いている。
だから、感情的になることが多い。
「話合い」だといって、実際は「押しつけ」が多いから感情的になるのだ。
自分の誤りは素直に認め、相手の欠点を指摘しない方が賢い。
非難したり、相手を否定したりする会話は、人間関係を破滅させる。
これでは好かれない。
どんなに偏差値が高くても、権力を持っていても、他人から「好かれない人」が起こした事件をマスコミは大々的に報道している。セクハラ・パワハラ・スメハラ・マタハラ・・・。悲しい。哀れである。
五木寛之さんや下重暁子さんの「孤独が良い」という本が売れているようであるが、それはインテリで「芯が強い人」の言うことだ。
私のような一般大衆は、温かな人間関係の中で「好かれて生きる」のがいい。
佐藤愛子さんの著作には「生きる知恵」が書かれている。
生命を輝かせる知恵である。
彼女は孤独ではない。
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