ヒッタイトという巨大な帝国が、4000年以上前に栄えた。
「なにそれ?」と思う人が多いだろうが、
エジプトの最盛期の王・ラムセス2世と戦い、引き分けた巨大帝国である。
この国のみが鉄を武器に変える「製鉄技術」を持っていたという。
トルコの広大なアナトリア高原で、鉄の戦車の軍団をイメージしてみよう。
この「鉄」が、これまでの人間の生活環境を根底から変えてしまった。
今回は、「新しい素材・新しい技術」の影響力について考えてみたい。
生活基盤を変革させるIoTとAI
中3の孫娘が「スマホを学校で禁止する理由を教えてほしい」といってきた。
秋のディベート大会のテーマが「スマホの是非」なのだという。
「いつもスマホを使っているのに、学校の先生はなぜ禁止するの?」と聞く。
実際に、スマホを当たり前に使っている人が多い。
夢中になって事故さえ起きている。
スマホの機能は、メール・電話・ゲーム・遠隔操作・・・と広い。
スマホは日常生活を「支配」し、私たちの考え方・意識にさえ影響している。
IoT技術は、街角の自動販売機の物品管理をし、バーコードがつかない商品はほとんどない。
急激にキャッシュレスの生活が迫っている。
人工知能(AI)が、私たちの日常生活環境に浸透し、人々から仕事まで奪おうとしている。
IoTもAIも生活基盤の根本的なところを変革させる力となった。
大学入試も、タブレット端末機を使う時代が迫っている。
現状でも、成績管理をするコンピューターなしで、入試を実施できない。
「紙の時代」から「パソコンの時代」へ。
そして、「AIの時代」へ。
新しい素材・機器は、私たちの「記憶の仕方」「生活の仕方」を変えていく。
生理学者は「人間の脳の形も変化」するという。
ヒッタイトの都、ボガズキョイと聖地ヤズルカヤを歩いたことがある。
私はここで、なぜ製鉄技術がヒッタイトで開発されたのかを知りたかった。
「融点」が高い鉄の加工は高温でなければできない。
ハッティという先住民が住んだという地域は「登り窯」に適した谷間だった。
製鉄の技術はここにあったという説がある。
しかし、実際は何もわからなかった。
私たちは鉄器文明社会で暮らしてきた。
中国の春秋時代の終わりころ、「木製の鍬の先に鉄をまく技術」が生まれた。
硬い鉄により「土を深く耕すこと」ができるようになり、「空中窒素」を土の中にまぶすことができるようになった。
これにより、農業生産力は7~8倍上がったという。
生産力の向上は、人々の生活を豊かにすると同時に、領地争いを引きおこした。
戦争である。
春秋から戦国の時代は、生産力の向上により、各地の覇権争いを激化する。
「覇権争い」はいまも続いている。
生産力の向上と連動しているからである。
中・南米は、青銅器文明も初歩段階で、鉄器の開発・発達はなかった。
青銅は銅鉱石と錫を溶かした鋳造技術が必要で、アステカ・マヤ・インカでは技術的にも経済的にも充分な対応ができなかったようである。青銅器は硬いかわりに「折れやすく」武器に適していない。ましてや、中・南米には、「鉄」を日常生活の中で使用する文明の発展もなかった。
また、「車輪の原理」を知らなかったから、戦車や荷車がなかった。
そのために、鉄製武器を持ったスペインの侵略に、簡単に屈してしまった。
「おじいちゃん。これ面白いよ」と、小学2年生の孫娘が得意そうに左腕を見せた。
そこに「スマートウォッチ」が光っていた。
ウエアラブルデバイスは、こんな身近なところまで普及している。
IoTは膨大なデータを蓄積できるから、建物・電化製品・自動車・医療・教育など、さまざまな分野で活用されている。現状は各分野で「データの蓄積」を急いで、「分析する人材」を求めている段階であるが、これは時間の問題で解決されるだろう。
自動翻訳機さえあれば外国旅行も困らない。
医療分野では、健康状態の記録・管理を医師と共有できるし、自動車そのものにインターネット通信機器が備えつけられる「コネクティッドカー」も登場した。また自動車の自動運転システムの開発も進んでいる。
新素材としての「鉄」が新しい世界を切り拓いたように、「IoT/AI」が及ぼす新しい世界は予想できないほどの広がりになるだろう。
人工頭脳(AI)の開発を進めている友人は「知識と経験」を積めば、あるレベルまでのAIの開発は簡単だという。
今後は「小・中学生の開発能力が大きい」ともいう。
学校でプログラミン教育を進めようとしている。
これからは、インターネットにつながるモノは爆発的に増加するだろう。
ヒッタイトの鉄の革命は、形を変えてIoT/AIとなって、私たちの生活に強大な影響力を持っている。
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