仮面の下には、どんな顔が隠れているのか。
人間は、いろいろな仮面を使い分けて生きている。
仮りの面と本性の分離が難しくなっている人もいる。
どちらが本物か。
スポーツの選手や舞台に立つ俳優たちは仮面をつけて集中力を高める。
受験生も同じである。
今回は「仮面の効用」について考えてみたい。
「仮面」の持つ意味と効用とは!?
「羽衣」を身につけた途端に、「人間」であった女性が「天女」になった。
人間らしい感情・世俗の人が持つ喜・怒・哀・楽の一切が天女にはない。
だから「かぐや姫」は、天女になる前に、「不老不死」の供物を天皇に渡したが、「こんなものはいらない」と日本で一番高い山の頂で燃やしてしまった。
<フジ=不死=富士>である。
富士山は生きている。
竹取物語「かぐや姫」も三保の松原「羽衣伝説」も、根っこは仮面である。
「羽衣=仮面」をつけて、別次元の者になるという意味である。
私たちも、たまには天女になるのも悪くない。
イメージは「能面」である。
小説「仮面の告白」は、三島由紀夫の代表作の1つである。
仮面の下にある「矛盾した自分の姿」を告白するという小説である。
三島の性癖・劣等感・屈折・憧憬・確執・・彼は多くの顔を持つ作家だから、告白するものも沢山持っていたのだろう。
『憂国』『豊饒の海』に連なる作品と言・動は、仮面の下に秘められた様々な「業」のバリエーションである。
古代ギリシャの悲劇は「仮面」をつけて演じられる。
市民は、舞台で演者になることが義務付けられていた。
市民の一体感である。
物語は合唱で進められる。
これがコーラスの原型である。
仮面をつけた者がいろいろな他者を演じる。
私はソポクレスの戯曲“オイデプス王”が好きである。
「朝4本足・昼2本足・夕は3本足になるものは何か」というスフィンクスの謎かけを「それは人間だ」と解く物語である。仮面をつけたら、巫女・王・王妃・羊飼い・家来・・・など、何にでもなることができる。
浅田真央さんの「仮面舞踏会」は、とても美しい。
私はフィギュアスケートのファンだから、彼女の2009年世界選手権のフリーの演技が忘れられない。
しかし、この物語は「ロシア貴族で不倫を疑われた奥さん」がベースになっている。
ロシアのタラソワ女史が、レールモニトフの戯曲にハチャトリアンが管弦楽曲をつけたものに、真央さんの個性を合わせて「振り付け」たものである。
スト―リーの展開を知ると、浅田さんのアクションの意味が理解できて興味深い。
無駄なアクションは1つもない。
仮面をつけたパーティは、現在でもいろいろな形で行われている。
アイドルグループ少年隊(錦織一清・植草克秀・東山紀之)の「仮面舞踏会」は、グループの代表作である。
冒頭の歌詞にある「シャイな言い訳 仮面で隠して 躍ろ 躍ろ かりそめの一夜を きっとお前は悩めるマドンナ・・・」は、刺激的な歌詞であるが、仮面舞踏会の意味をズバリ言い当てている。
踊る人の「仮面の裏」に、少年隊メンバーのその後の人生を重ねてみると興味深い。
「仮面」を使って受験を乗り切る5つのポイント
さて、これらを受験に読み替えてみよう
①受験問題はいろいろな仮面をつけて出題される。
だから「出題者が答えさせたいこと」を見抜かなくてはならない。
留意して設問を読み、テーマを見破って答えを作成する。出題者は、素直に<素顔=出題の意図>を見せない。
②入試は「受験生を振るい落とすため」のテストである。
救済するテストではない。
ここが学校のテストと違う。
出題者の仮面の告白は解答解説しかない。
これを行わない大学が多いから、昨今問題になっている。
直前演習で、模試の見直しも、この観点で徹底して行うと有効である。
③入試の仮面の裏は「この受験生は、私の大学に適しているか?」の調査である。
入学させるにふさわしい「資質の有無」を判定するために入試が実施される。
レベルの高い入試ほど三島由紀夫のように多面体である。
④フィギュアスケートの振り付けに意味があるように、大学入試の課題文や設問の中に意図が隠されている。
過去問の中から「傾向やクセ」を発見出来たら実力がついたことになる。
勿論、安易な出題をする大学もある。手軽さ・安易な出題に流される大学に飛びつかない方が良い。
⑤受験生は、これから「焦る」「慌てる」「あがく」から、これに抵抗する仮面をつけよう。
誰だって、同じ条件なのだ。「仮面の効用」は自己暗示に通じる。
「粘る」「諦めない」「逃げない」という仮面をつけて、受験勉強に集中することだ。
仮面は「逞しい別人格」の力を与えてくれるに違いない。
私たちは、いろいろな仮面をつけて日常生活を送っている。
仮面は「自分の存在の仕方を変える力」を持っている。仮面の効用。
仮面を有効に使って強く生きる。
それを楽しむ「意志」が大切である。
仮面は自分自身が「主体的」につけるものであって、他人からつけられるものではない。
AI(人工知能)が仮面をつけるとは考えられない。
仮面を必要としない。
仮面は、人間が「人間らしく生きる」ためのものでもある。
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